「これからの壺屋焼」の為の新たな取組み事業
沖縄県における焼き物(やちむん)は琉球王朝時代より伝統的に引き継がれてきたもので、文化的な価値が高く、観光産業と連携して県経済に貢献している。ところが近年、伝統工芸品は時代の波を受け、安価な輸入食器や洋食器を使用する食生活の変化へ対応が求められる状況に置かれている。
平成18年度に行った調査(沖縄県工業技術センターの先導戦略事業)によると、県内で生産する陶器は、品質面(欠けやすさ、収納性の悪さ、食器洗い乾燥機への不対応)と量産産化(必要な時に必要な数が手に入らない)に課題があることから、ニーズはあるものの実際には利用が敬遠されており、販売機会を逸失しているという結果が報告された。
県内で生産される陶器の品質面での改善や、量産化が実現できていない最も大きな要因の一つとして、良質で品質の安定した坏土(はいど:焼き物を作るための生地土)を供給できていない点が挙げられる。良質で安定した坏土が供給できれば、陶器の品質改善や量産化の実現が見込まれる。
本事業では、県産坏土の品質改善をメインテーマに、坏土生産技術、陶器量産化技術とともに、ユーザーの観点を重視したデザインに更なる魅力を創出するための製品開発・情報発信等について検討を行い、沖縄県の陶器産業を振興させるシステムを検証し、県内陶器産業をはじめとした県経済の活性化に資することを目的としています。
実施実例(平成22年〜24年)
1. 坏土の高品質化、安定化、機能性の追求
坏土生産実証業務は、県の公募で採択された坏土生産者等と、沖縄県工業技術センターが連携して技術開発を図った。
主な内容として、まず各種調査により坏土の現状を明らかにし、問題点の解決を図った。
最終的に複数坏土の複数原土のブレンドを前提とした坏土の生産技術向上を図り、高品質な坏土の安定供給が可能となる実証設備の検証を行った。
現状坏土の問題点
- 品質のバラツキが大きい
- 成形性の悪さ
- 乾燥時のキレの発生
- コシがなく、へたりやすい
- 焼成時に割れが発生する場合がある
- 酒壷を製作した際に漏れが発生する
- 焼成後の素地の強度が低いといった問題点が挙げられる。
1. 調査 |
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2. 部会の開催 |
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3. 坏土生産技術開発実証試験 |
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4. 坏土の品質管理システム構築 |
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5. 坏土モニター募集説明会の開催 |
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6. 実証試験工場 | |
7. サンプル坏土使用モニターリング調査結果 |
2. 量産化(反復生産)技術の開発、製品品質の安定化
陶器を量産(反復生産)する際には主に石膏型を用いている。その石膏型を用いた陶器生産には、様々な専門知識や熟練された高度な技術を必要とするため、 技術の伝承や新たな需要に対する迅速な対応が困難な状況にある。このため県内では量産が必要な陶器の需要への対応が難しく、県外および海外からの移入品に頼っているのが現状である。
県内陶器産業の現状課題
- 外的課題
量産化されていない為、同一製品の大量受注が困難で、安価での提供が難しい - 内的課題
石膏型製造には設備投資がかかり、一度作った石膏型は長く使う為、新製品開発を鈍化させている
以上の事から考えられる問題
- ・日常的に使用する器類への参入が難しい
- ・引き出物や記念品などの数量を要する贈答品
- ・ホテルや食堂なので使用される業務用食器
- ・形状が寸法など精度が求められる製品
この現状を踏まえ、手作り中心の伝統的陶器産業とは競合しない、工業的分野への需要にも対応できることを目標として、IT技術を用いた陶器原型加工技術の開発に関する以下2つの項目について取り組んだ。
1. 陶器および石膏型設計・制作プロセルのデジタル化 |
3DーCAD/CAM技術を活用した原型および石膏型設計・加工技術の開発
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2. 迅速な製品開発のための陶器形状デジタルデータ蓄積 |
3D-CADデータによるモデリングデータ、リソース(形状資源)の整備
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3. 新たな用途・販路の開拓、製品開発の仕組みづくり、情報発信
これまでの調査から、沖縄県産の陶器の多くは観光土産品が中心であり、県内の一般家庭に充分には行き渡っていないことが明らかになった。安定した県産坏土や反復生産技術などを利活用しながら、沖縄の陶器が展開可能な新しい市場や取り組むべき事柄・方向性を検討してきた。また事業の成果をインターネット等を通じて広く情報発信し、生産者をはじめ関連する人々に活用してもらえるような基盤整備に取り組んだ。
製品開発・情報発信部会実施企画
1. 調査 |
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2. 部会の開催 |
3D-CADデータによるモデリングデータ、リソース(形状資源)の整備
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3. 製品開発・情報発信部会実施企画 |
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